トイレの神様
「トイレの神様」と聞けば、シンガーソングライターの植村花菜さんを思い浮かべる方もいらっしゃるでしょう。
植村さんは曲のヒットを祈願して、トイレの神様を祀る寺院に絵馬を奉納されたと聞いています。
そのトイレの神様というのが「烏瑟沙摩(うすさま)明王」。
富山県内には、現在する最古にして最大級と言われる烏瑟沙摩明王が。
高さ約120cm。鎌倉時代の作です。
富山県高岡市の瑞龍寺(ずいりゅうじ)の法堂(はっとう)般若の間に安置されています。
(上記画像は同寺リーフレットより。写真撮影はできませんでした。)
瑞龍寺は、曹洞宗の仏教寺院です。加賀前田家二代当主の前田利長の菩提寺として知られています。
開基は加賀前田家三代・前田利常。
江戸時代初期(前期)の禅宗様式の伽藍配置が特徴です。
山門・仏殿・法堂が国宝に、また総門・禅堂・大庫裏・回廊・大茶堂は重要文化財の指定を受けています。
正面の総門(重文)は正保年間の建造物。くぐるとまず視界に入ってくるのが山門(国宝)です。
建立は正保二年(1645)ですが万治年間に建て直しがあり、延享三年(1746)火災により焼失。
現在の山門は文政三年(1820)のものです。
左右には金剛力士像。拝観はできませんでしたが楼上には釈迦如来と十六羅漢が祀られています。
法堂(国宝)側から見た仏殿(国宝)。その奥が山門(国宝)です。
この仏殿に本尊が祀られています。
ちなみに瑞龍寺の本尊は、烏瑟沙摩明王ではありません。
実は釈迦如来。唐仏の釈迦三尊像(明時代)がこの仏殿に安置されているのです。
華工すなわち中国人仏師によるもので、中国または日本国内で制作された像で、加賀前田家から寄進されました。
瑞龍寺は近世を通じて前田家の手厚い保護を受け、寺領300石を有したといいます。
明治期に入り廃仏毀釈の波が押し寄せました。前田家の庇護が受けられなくなった瑞龍寺は困窮の時代に。
復興に取り組んだ瑞龍寺は、明王像を布教の中心のひとつに据えたのでした。
昭和60年(1985)に始まった「昭和・平成の大修理」は約10年の歳月が費やされます。
この修理に伴い、明王像は法堂に祀られるようになりました。
そして平成9年(1997)国宝に指定されたのです。
富山県では唯一の国宝。
2014年の役所広司さん主演の映画『蜩ノ記(ひぐらしのき)』のロケ地にもなりました。
お立ち寄りの際にはぜひ訪れていただきたい、おすすめの場所です。
燃え盛る炎でこの世の不浄なものすべてを焼き尽くす烏枢沙摩(うすさま)明王。
ゆえに 密教や禅宗の寺院では、便所に祀られることが多いのです。
瑞龍寺では現在、回廊の一角に(高岡銅器でしょうか?)大きな明王像が据えられています。
こちらは撮影可。
ちなみに、駐車場から総門までの途中に受付(券売所)があるのですが、
受付からすぐのお手洗いの入口にもやや小ぶりな明王像があります。
ぜひチェックしてみて下さい。