越中仏像散歩〜大岩山・日石寺
剱岳(つるぎだけ)は、北アルプス北部、立山連峰の一峰で、標高2999mを誇る霊峰。
上市(かみいち)は、富山県東部に位置し、剱岳の麓に広がる静かな山あいの町です。
古来から立山修験の裏参道に通じ、信仰の里として栄えました。
平安時代末期から鎌倉時代にかけての寺院や経塚がまとまって発見された黒川遺跡群は
当時の宗教や信仰、地域社会との関係を示す北陸地方の代表的な事例として、国指定の史跡ともなっています。
さて、近年ではむしろ森林セラピーに注目や関心が集まっている上市は、
富山でも有数のパワースポットでもあるのです。
その代表格が、大岩山・日石寺。
私も幼い頃に訪れているかもしれないのですが、自らの意志で訪れたのはつい最近のことでした。
私の中のそれまでのイメージは、滝と、岩に彫られた不動明王(「大岩不動」)。
このお寺には滝があって、白装束に身を包んでの滝行体験ができるのです。
棟方志功もこの地を訪れ作品を残しています。(棟方の版画作品は市場にもときどき現れます。)
ところで・・・百聞は一見に如かず。
拙い写真ですが、その迫力が少しでも伝われば・・・
大迫力!仰天しました。平安期の不動明王、その高さは 3,153cm。なんと3mを超えているんです。
しかも前方に傾き気味に彫られており、見下ろす者たちにまさに迫りくる印象です。
棟方志功もこのエネルギーをきっとその肌で感じ取ったに違いありません。
また、驚くべきは、なんと屋内⁉ということ。
東大寺の大仏殿をイメージしていただければと思います。
信仰の中心、不動明王を風雪から保護するための覆堂(ふくどう)は「不動堂」と呼ばれ、本堂となっています。
磨崖仏(まがいぶつ)の作例は、北陸や東海地方では数が少ないと聞いています。
そんな中、日本でも第一級の作品が、こんな間近にあったとは・・・
県外からお客様がいらっしゃると、おすすめの美術館はどこですか?とよく尋ねられるのです。
地方都市の美術館としてはたしかによい美術館は富山にもあるのですが
充実した国立・公立・私立の美術館が多い大都市とは質量ともに規模が全く違うことを知っているので
やはりご案内するには物怖じしてしまいます。
しかしこればかりはぜひ見ていただきたいですね。
寺伝によれば、大岩山日石寺の開基は行基。
神亀2年(725)行基によって一夜のうちに凝灰岩の巨岩にこの不動明王が彫られたとされています。
この不動明王像をご覧になればお分かりのように、大岩山日石寺の歴史は古いです。
立山や剱岳における山岳宗教の行場として興り、平安期には真言密教や修験の道場として栄えたといいます。
中世には大社として60の坊社、僧兵は1000を超えたとも。
天正年間(1585頃)上杉謙信の兵火に遭って山内は全焼。
しかし慶長年間に加賀前田家の庇護を受け再興します。
昭和42年(1967)に火災に遭って江戸期の建造物や資料の大半を焼失しました。
その際、慶安4年(1651)に加賀前田家3代利常により建立された不動堂も焼失。
現在の不動堂は昭和43年(1968)に日石寺信徒の寄進等によって建立されたものです。