越中仏像散歩〜弥勒山・安居寺
富山県南砺市にある、弥勒山安居寺を訪れました。
インドの僧、善無畏三蔵が開基、創建は養老2年(718)と伝えられる真言宗の寺院です。
天平元年には聖武天皇が勅願寺と定め、行基が勅命を受けて壮大な伽藍を造営したといいます。
平安時代には花山法皇、中世には吉田兼好や飯尾宗祇も訪ねたそうです。
本尊は木造聖観音菩薩立像。秘仏で33年に一度開帳されるのですが、
毎年10月18日には虫干しのため収蔵庫が開扉され、像の拝観が可能なのです。
ガラス越し、やや距離のある位置からはほぼシルエットだけでしたが、わかりやすい平安の姿でした。
カヤ材の一木造り。イヤリングを付けた仏像は国内でも珍しいのだとか。
浄土真宗王国ともいえる富山県。
しかし創建が奈良時代にさかのぼるとされる寺院も存在し、
平安まで遡る古い仏像も伝存していることはなんだか喜ばしいことのように感じます。
幼少期と大学生活、古美術の修行生活をのぞくと人生のほとんどは富山にいるのですが
まだまだ知らないことが本当に多いですね。
まだ古美術の修行中、関西にいた頃のことです。
大和文華館(奈良)に「東アジアの金銅仏」展(平成11年)の見学に行き、
初めて「立山神像」なるものを目にしました。
キャプションを見た瞬間の「えっ、ひょっとして、あの立山?」
とても驚き、そして感激したのでそのときのことはよく覚えています。
立山といえば富山県民なら誰しも小さな頃から親しんでいる、富山県で最も有名な山なのです。
正直なことを言えば、私もそれまでレジャーのイメージしかありませんでした。
が、その立山神との出会いを機に、立山が富士山とも並ぶ日本を代表する霊山であることを知り、
立山信仰にも関心を持ち始めるようになったのです。
江戸期のものですが、後に立山曼荼羅を扱うことができたのも、
このときの出会いがあったからこそだったように思っています。
遠方への移動する機会がめっきり減ってしまいましたが
近くにもまだまだ知らないよい場所、よいものがありそうです。