残り香
せめて人ごみをさけてならばと、早朝の散歩へ。
空には青空が広がり、小鳥たちがさえずる、さわやかな朝です。
近所の小学校には見頃をやや過ぎた桜の木々の姿が。
帰り道に遊歩道に落ちた桜花を拾って自宅に持ち帰り、残り香を楽しむことにしました。
今週、富山市内でもそれぞれの学校で例年よりも規模を縮小しながらも入学式が行われました。
自分も学生時代、毎年4月に新しい学年に上がるたびに、気が引き締まり、心地よい緊張感を感じていたのを覚えています。
ところで、職業柄、お客様がどのような品物を手にお取りになるのだろうと気にしていると
次第に、はじめてのお客様でも、お話を伺わなくてもどんな品がお好みなのか、分かってきました。
また、その方がどれくらい経験をお持ちなのかもある程度分かります。
さて、私が30代の頃ですが、ある大きな催事に出展したときに、こんなことがありました。
リーズナブルな価格設定とラインアップの幅広さもあって、
ありがたいことに毎回ご好評をいただき、楽しみに駆けつけて下さる方たちで賑わっていました。
ある初めての若い男性のお客様がいらっしゃったのですが、それがどう見ても骨董初心者の方だったのです。
何を手に取ってよいのかさえ分からないご様子でしばらく店内をぐるぐるとご覧になった後、
おもむろに「これ下さい!」と。
売る側としては、お買い上げいただくのはむしろありがたいことなのですが
大丈夫かなと心配になる瞬間もときどきあるのです。
そこでお尋ねしてみると、こんな返事が返ってきました。
「実は僕は品物のことは全く分からないんです。
でも、このお店のお客さんたち、皆さんの目が輝いているじゃないですか。
だから、僕も安心して何か買ってみたいと思いました。」
思わずハッとさせられた瞬間でした。
そんな風に意識したことは正直ありませんでしたが、ただお客様に喜んでいただきたい一心でやってきたのは事実です。
とても嬉しく励みになったありがたい言葉でした。
今でもときどき思い出しては自らを奮い立たせています。