工芸とデザインの境目

「開化堂の茶筒はありませんか?」

と県外からお客様が訪ねていらっしゃいました。いつのことだったでしょうか。

このとき、私は開化堂のことを初めて知りました。

何も知らなかった私に、その方は丁寧に教えて下さいました。

開化堂は、京都の手作り茶筒の老舗です。明治8年(1875)創業。

私たちはお客様からずいぶんたくさんのことを学ばせていただいています。

 

ところで、約3年前になりますが

2016年秋から2017年にかけて、金沢21世紀美術館で「工芸とデザインの境目」という展覧会がありました。

某所で偶然見かけたそのリーフレットに、開化堂の茶筒の写真が載っていたのです。

なんだかとても関心が沸いて、展覧会に行ってみることにしました。

 

「工芸とデザインの境目」は、プロダクトデザイナーの深澤直人さんが監修された展覧会。

工芸やデザインという語は、私たちが普段から何気なく用いているものです。

それらをさまざまな切り口から見つめることで、工芸やデザインの本質に迫ろう、という意図を感じました。

 

後日、展覧会を紹介する記事を何かで読んだのですが、印象的だったのは秋元館長の言葉でした。

「一つの例だけど、工芸の汚れは愛着。デザインは汚いと感じるとこが違いかもね。」

 

傷ついたり汚れたりすると、劣化とみなされ価値が損なわれるデザイン。その一方、工芸では「味」となります。

使用や経年による質感の変化と、使用者に深まる愛着。

時間は、デザインを工芸へと変える可能性を秘めています。

 

 

開化堂の茶筒は、まさに育てる茶筒。機能性と風合い。長くつきあえる品物です。

現在、ヤフオクにて開催中の小さな企画展【筒のかたち】にて、

数十年を経た昭和期(あるいはもっと古い?)の開化堂の銅製茶筒もご紹介しています。

よろしければぜひご覧になって下さい。

 

 

 

2020年01月31日