麦わらの鉢

 

金沢で出会い、一目惚れして連れ帰ってきました。

家に戻るとさっそく桐箱を開けて、棚の上に置いて、改めて眺めてみる私…

よかった、間違いなかった!

時間がたって少し冷静さを取り戻しても、変わらず魅力的に映る品でした。

 

 

 

それにしても、「麦わら」は奥が深いです。

シンプルな形、シンプルなデザイン。そのシンプルさがキーワードなのですが

同じ時代の瀬戸の麦わらでも、線の太さや勢い、バランス…

ひとつひとつ表情があって、面白いです。

この品は、これまで好きで扱ってきた麦わらの中でもトップクラス。

描線は力強く緊張感があり、心地よいリズム感があり、

それでいてやさしさと温かさを兼ね備えています。

 

数年前のこと、

富山出身の映画監督、本木克英さんにお話をうかがったことがあります。

早稲田大学を経て松竹に入社、その下積み時代に

勅使河原宏監督から指導を受けられたそうです。

映画監督にも黒澤明監督を筆頭に

古美術に造形が深い方々がいらっしゃいますが

勅使河原監督もその一人でした。

李朝の白磁の壺を出してこられて

「この白がわかるか!」「この白が出せるか!」

叱咤の繰り返しだったのだとか。

勅使河原監督は繊細な感覚を持ち合わせていらっしゃったのでしょうね。

 

骨董にはたしかに知識も必要です。

しかしながら、繊細な感覚や素直な目を大切に、

できればいつも持ち合わせていたいものです。

 お買い上げありがとうございました

 

2019年01月04日