片身替りの蓋物
片身替りといえば、白洲正子さんが所蔵した片身替りの盆が思い浮かびます。
このモダンな赤と黒の片身替りのデザインの漆器は、いつ頃から現れたものなのでしょう、
ただ盆をはじめ、お椀や木皿とさまざまな器種にこのデザインが取り入れられており
骨董の世界に身をおいていると、ときどき見かけることがあります。
私もこのシンプルで斬新なデザインが好きで、機会があれば入手するようにしています。
こちらは、先日、富山県内で手に入れた品です。
赤と黒の片身替りの漆器なのですが、こんなに大型のタイプは見たことがないような気がします。
存在感のある蓋付きの鉢です。喰籠(食籠とも。じきろう)と呼ばれる菓子器と思われます。
箱も失われており製作年代を特定することは難しいのですが
おそらくは明治から大正にかけての品物ではないかと推測しています。
年月を経て漆も落ち着いた風合いとなっており、その質感は骨董ならではのものでしょう。
新品の艶やかさこそ失われているものの、時を経てもなお魅力を放っています。
状態は、傷みが生じ、必ずしも良好とはいえないのですが、使用に支障をきたすほどではありません。
古いものです。多少の汚れや傷みはつきものだと受け入れて
おおらかな気持ちで楽しむのが骨董とのつき合い方かなと思っています。
次に大切にして下さる方への橋渡しができれば、なおありがたいことです。